あるところに、小さな女の子が住んでいました。女の子は森でキノコを集めたり、川で魚をとったりして暮らしていました。森は深く、川はキラキラといつも綺麗な水をたたえていたので、食べ物と、日々の暮らしに不自由することはありませんでした。 ただ、星の無い夜には、たまにですが、この空の続きのその先を見てみたいと思うことがありました。 ある日、薄曇り、細やかな雨の予感に満ちているような夕方に、狼がやってきました。 狼は、薄汚れた背中を丸めて、むき出しの大きな歯を見せてニッコリと笑いました。まるで、ゴロンゴロンと大きな岩が遠くから転げ落ちてくる、そんな笑顔でした。 狼の笑顔を見ると、女の子の両足はブルブルと震え始めました。それは何かしら不安を連れてくる笑顔でした。それと同時に、女の子は、こんなに震えてたらまっすぐ歩けないなと思いました。どうやって紫キノコの藪まで行こうかな? 狼は、ふうと溜め息をついてから言いました。 「怖くて歩けないんだね?」 「そうだけど、そうじゃない。歩けないけど、怖いことはない」 女の子は答えました。 「でも本当は怖いのかなあ?」 女の子は自分と狼に尋ねました。 狼は少し疲れた顔をして言いました。 「どちらでもいい。歩けないなら俺がおんぶしてあげよう」 そう言って、狼は薄汚れた背中を女の子の方に向けました。狼の背中は大きくて、森の切れ目の小さな広場の芝生を思い出させました。女の子は2つ数えてから、思い切って狼の背中に飛び乗りました。 暖かくて柔らかくて、狼の背中は思ったより居心地が悪くありませんでした。正直に言えば、どちらかというと、いえ、そこそこ、居心地が良いくらいでした。もうちょっとキレイだともっと良かったのに。女の子は自分が狼の背中をデッキブラシでゴシゴシと掃除しているところを想像して、ちょっと可笑しくなりました。そして、いつの間にか眠りに落ちていました。 ぼんやりした頭でぼんやりと光る光を見ながら、女の子は少しずつ目を覚ましました。そうして、自分が狼の背中に運ばれていることをやっと思い出しました。狼の背中に揺られながら、少し遠にある、キラキラ光る、黒い木になる光の実のような光景を見ていました。あたりへもう真っ暗な夜でした。 「あれは何?」 女の子が尋ねると、狼は女の子が目を覚ましたことに気付いて、...